屋根裏のちばてつや

昨日、ネットで漫画家のジョージ秋山が逝った、というニュースを見て、仕事中にぼんやりと今までの作品のことなど思い出して感傷に浸っていました。「銭ゲバ」など過激な作品から、44年連載されドラマ化された幕末を舞台にした庶民の人情を描く「浮浪雲」など、個人的には美保純主演で映画化された「ピンクのカーテン」や知らない人も多いかもしれませんが「デロリンマン」も好きな漫画でした。若い頃はテレビにも時々出ていて,
いつもサングラスをかけて語り口は柔らかいけど、独特なムードを持つ人でした。IQの高い人だったようです。

それから、帰宅して偶然テレビで、ちばてつやのNHKのドキュメントを観ました。ブログの今日のタイトル「屋根裏のちばてつや」。80歳を過ぎた、ちばてつやの日常をナレーション無しで編集していて、説明が無い分、こちらが考えさせられる良質なドキュメンタリーでした。NHKは最近どうしようもない番組があるけど、たまに良い番組がありますね。

ちばてつやの代表作「あしたのジョー」の
有名なラストシーンのコマです。
色鉛筆で模写ししてみました。



ジョージ秋山の訃報を知ったばかりだったので、「ちばてつやは元気なんかなぁ」と見始めましたが・・驚きました。びっくりするぐらい元気でした。現在もテニスをやったり草野球をやったり、老犬の散歩をしながら、漫画家としても現役でした。

売れっ子漫画家は過酷な生活が続くからか短命だったりしますが、ちばてつやの場合、高齢で元気なのは肉体的な健康面もありますが「生き方」、マインドの部分でシニアの世代の理想的な考え方をしてるいると感じました。

「私は若い頃から、今日一日を精いっぱい生きれたらそれで良い、という生き方をして来た」と自らを語っていました。「今日の締め切りが、後2ページ・・この2ページを描き終えるために今日めいっぱい頑張る、後はどうなっても良い」そんな感じで、超多忙な時も乗り越えて来たそうです。

つまり、「一日一生」の精神ですね。明日のことなど必要以上に考えない。「今日」を「」を全力で生きる。この生き方に徹することが出来れば、メンタルはすごくシンプルです。迷いも無いでしょう。不安も無いでしょう。結果的にストレスを抱えない生活になります。これは日々肉体的な衰えを感じながら生活するシニアの理想的な考え方ではないでしょうか。


ちばてつやの仕事場は屋根裏部屋にあります。今はスタッフは解散して、一人で漫画を描いているようです。デジタルではなく、昔ながらの原稿用紙に鉛筆で下描きして・・のスタイル。コロナの自粛で、ちばてつやもこの屋根裏部屋にこもることが最近は多いのだけど、何故か「落ち着く」「居心地が良い」らしいのです。それが何故だろうと自分なりに考えてみたら少期の体験から来るのだろうと自己分析しています。

ちばてつやは満州で育ち、敗戦後の混乱の中、日本へ引き上げる時に、中国人にかくまってもらい、一家でその中国人の家の屋根裏部屋で、しばらく過ごしたことがあるらしいのです。その時、たいくつでぐずる弟達のために絵が得意だった、てつやが絵本を描き弟達を喜ばせたそうです。

それこそが漫画家ちばてつやの原点だと、本人も自伝で描いていますが、コロナ自粛の屋根裏部屋生活でそれを本人が改めて実感しながら、漫画家人生の終盤に原点に立ち返り漫画を描いている・・というドキュメントです。

それがまったくナレーションが無く心情的な説明は無いのですが、ソレを感じられるようにうまく構成されていました。

今も現役漫画家のちばてつや、テレビを見て、ジョージ秋山で少し凹み気味の気分が持ち直し、嬉しくなる気分でした。『今日一日を精いっぱい生きる』、私もそうありたいですね。







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